正倉院展で感じたこと、宝物や天平時代への思いを詠む「正倉院展短歌・俳句コンクール」(主催・奈良国立博物館、読売新聞社、読売テレビ、協賛・セキ、協力・宮内庁正倉院事務所)の入賞作品と入賞者40人を発表します。


一般とジュニア(小中高校生)の部を合わせて、短歌は943人から計1625首、俳句は1449人から計2454句の応募があり、応募作品は、正倉院事務所の飯田剛彦所長、奈良国立博物館の井上洋一館長らが審査しました。


短歌部門 【ジュニアの部(小学生~高校生)】

▽最優秀賞

武田奈々さん(14) 兵庫・宝塚市立御殿山中2年

「虹色のキャラメルに似た瑠璃の玉 ひと()めしたら天平の味」

▽奈良国立博物館賞

林美咲さん(13) 大阪市立天満中1年

安泰を願い縫われた糞掃衣(ふんぞうえ)今につながるエスディージーズ」

▽読売新聞社賞

仁木彩乃さん(15) 茨城・常総学院中3年

「秋の夜に(はかな)く奏でる琵琶の音は君への形の無い恋文」

▽読売テレビ賞

冨田輝君(13) 名古屋中2年

「布作面みたいな顔を描いている笑ってくれる君がいるから」

▽セキ賞

福田匠翔さん(16) 名古屋高1年

「詩のような小説かいている夜に正倉院の紙と筆欲し」

▽審査員特別賞

古橋香苗さん(14) 茨城・常総学院中2年

「スッポンの甲羅にうつる秋北斗奈良時代と同じ空」


横道玄君(13) 山口大学教育学部付属光中1年

「白象がくしゃみをすれば男らの琵琶の音色も音程外す」

▽優秀賞

加納輝一さん(16) 名古屋高2年

「果てしなき道ゆく旅の歌声を蜻蛉(とんぼ)玉へと閉じ込めておく」


石井彩音さん(18) 茨城・角川ドワンゴ学園S高3年

「静かなる鳥のさえずり静かなる草のざわめき屏風(びょうぶ)のうち」


薄井里奈さん(17) 栃木県立矢板東高2年

「千年と十七年の目が合った螺鈿(らでん)と私の虹彩越しに」

短歌部門 【一般の部】

▽最優秀賞

島本太香子さん(62) 奈良市

(あるじ)なき書斎の棚に七十五冊目の図録加えし霜月」

▽奈良国立博物館賞

木森陽子さん(52) 兵庫県西宮市

「生きてきたあらゆる手触り手がかりに心で触る樹皮色袈裟(じゅひしょくのけさ)

▽読売新聞社賞

武田優子さん(46) 兵庫県宝塚市

(つま)立ちて磁鉢仰ぎし日はとほくもう背伸びせぬ子と磁皿見る」

▽読売テレビ賞

松尾初夏さん(72) 徳島市

「網膜にまばゆき螺鈿とぢ込めて最終便のバスにまどろむ」

▽セキ賞

里井貴美子さん(61) 奈良県香芝市

「すっぽんの蓋の器に見入る人皆すっぽんの顔をして」

▽審査員特別賞

小見伸雄さん(54) 大津市

「秋風を絡めて手話の細き指樹皮色袈裟の粋を伝へむ」


一條智美さん(48) 堺市

「行列に並ぶ列からわくわくがはみ出している正倉院展」

▽優秀賞

上久保忠彦さん(72) 香川県三豊市

「天平のしゃべり聴きたし布作面口のあたりの穴に耳寄す」


中田典子さん(74) 奈良市

「七つ星背負いしすっぽん猿沢の池にそおっと放してみたき」


渡邉照夫さん(71) 埼玉県鴻巣市

「紛争の地から逃れて千年のラピスラズリの深き愁いよ」

俳句部門【ジュニアの部(小学生~高校生)】

▽最優秀賞

中原花音さん(15) 茨城・常総学院中3年

星月夜犀角(さいかく)杯で星を飲む」

▽奈良国立博物館賞

鈴木哲平さん(17) 名古屋高2年

「円鏡に獣の遊ぶ星月夜」

▽読売新聞社賞

高尾知洋竣君(14) 大阪市立天満中2年

卒業のアルバムは僕の正倉院」

▽読売テレビ賞

茨木康之介君(10) 奈良・帝塚山小4年

「息を止め伎楽(ぎがく)面力士とあっぷっぷ」

▽セキ賞

中亜由美さん(15) 大阪・樟蔭中3年

「瑠璃の杯地球の色と同じいろ」

▽審査員特別賞

仁科拓也君(12) 奈良・橿原市立耳成南小6年

「令和での秋風に居る正倉院」


地引結菜さん(13) 新潟市立黒埼中1年

「白象も琵琶で舞いそう月の(えん)

▽優秀賞

林田遼真君(13) 大阪市立天満中1年

「シルクロードの使者渡り鳥の群れ」


吉井咲喜さん(14) 群馬・高崎市立佐野中2年

山粧(よそお)う目にとびこんだ袈裟の色」


小林拓真君(13) 京都教育大学付属京都小中7年

「秋色や酔胡(すいこ)王面色深し」

俳句部門【一般の部】

▽最優秀賞

上田智子さん(48) 大阪府枚方市

「スッポンの甲羅に刻む大宇宙」

▽奈良国立博物館賞

音羽和俊さん(77) 神戸市

「天平の袈裟に深まる秋のいろ」

▽読売新聞社賞

中井ほなさん(68) 京都府宇治市

「天平へちょっと日帰り柿たわわ」

▽読売テレビ賞

中村結花さん(61) 千葉県船橋市

「天高し良弁僧都(ろうべんそうづ)筆堂々」

▽セキ賞

内藤保幸さん(75) 神奈川県平塚市

「伎楽面にたりと笑ふ秋日和」

▽審査員特別賞

小川敏子さん(72) 三重県鈴鹿市

「正倉院展図録繰り繰り電車中」


藤原ハルミさん(61) 札幌市

「荒星やラピスラズリの僧の杖」

▽優秀賞

小林正之さん(68) 茨城県常陸大宮市

「天平の扇開くや菊日和」


川井惠津子さん(75) 大阪府枚方市

「鹿のぞく私ものぞく正倉院」


田中恭司さん(60) 岐阜市

「星流れ紫檀小架(したんのしょうか)の無表情」


主催

奈良国立博物館、読売新聞社、読売テレビ

協力

宮内庁正倉院事務所

協賛

セキ

審査員

短歌:上野誠氏(国学院大学教授)、永田紅氏(歌人)

俳句:坪内稔典氏(俳人、佛教大学名誉教授)、長谷川櫂氏(俳人)

共通:飯田剛彦氏(宮内庁正倉院事務所長)、井上洋一氏(奈良国立博物館長) ほか

お問い合わせ

読売新聞大阪本社 文化事業部
電話:06-6366-1848(平日午前10時~午後5時)


  • ※正倉院展短歌・俳句コンクールは今回で終了しました。